【校長ブログ】共通テスト「地理B」を終えて
今日、暦の上では「大寒」。本校中学3年生(34期生)に課せられている4000字の「卒業論文」の締め切りまで残り3日となりました。その後、約1か月かけて「卒業論文」読んで最終評価することが私の課題であり、どんな仕上がりになったか楽しみな時間でもあります。優秀作品(最優秀賞1編、優秀賞2編)は3月の修了式で発表します。続く中学1,2年生の皆さんも先輩たちの論文を参考に、より良い論文づくりに励んでください。それには、しっかりと参考文献・図書を読み込む習慣を身につけることが一番の作法です。COVID-19感染症拡大で外出や部活動が大きく制約されている今こそ、じっくりと本を読む良い機会だと思います。中学・高校生時代の読書習慣の差は、知識習得や知的好奇心を育むこと以上に、所得など生涯の生活に大きな影響を与えることが分かっています。今年の目標の一つに「正しい読書法の修得」を掲げてはいかがでしょうか。
さて緊急事態宣言の下、先週末には高大接続改革の目玉として導入された大学入学共通テストが行われました。本校では、大学入試センター試験と同様に高校3年間の教科学習の成果を測る一つの尺度として、全員が受験することにしています(正式な成績報告は4月の成績開示通知後になりますが)。31期生の皆さんも果敢にチャレンジしました。ただ改革の目玉として掲げていた「英語」民間試験と「国語」「数学」の記述問題の導入は準備不足から見送られ、加えてCOVID- 19感染拡大という厳しい状況下での実施となり、受験生にはプレシャー以上に、不安と負担が大きかったことだと思います。ここから始まる本格的な大学入学一般選抜へ向けて、引き続き努力を重ねてほしいと願い、心より応援しています。
ところで、今年も16日の夜からインターネット上で予備校が提供する共通テスト「地理B」の問題を入手し、翌、日曜日のほぼ一日を使って「どこよりも早い解説書」を作成しました。これは、私が教員になってから毎年、自らに課している課題(ノルマ)であり、翌々日の月曜日には高校1,2年生の希望者に配付していました。今年の「解説書」はB5判で全15ページ。と言っても、前半の9ページは問題全体の傾向分析と過去5年間のデータ集で、実際の問題解説は6ページ足らずです。今年の「地理B」の問題では、大問が1つ減り、マーク数も3つ少なくなって32となりました。結果的に1問(マーク)当たりの配点が高くなった(4点問題が10問)ため、1つのミスが大きく得点に影響するようになりました。また、総ページ数は大問が減少したにもかかわらず、27ページと変化なく、問題文の量が増えました。その分だけ読み取る文章量が多くなり、解答に至るまでの時間を要したと思われます。問題の難易からすれば、予備校各社の指摘通り「やや難」というところでしょうか。後半になるに連れて「やや易」化している印象で、私の予想平均点は62点としました。
こうした中、共通テスト「地理B」大問5で扱われた京都府宮津市に関する地域調査の問題が、入試直前の1月9日に放映されたNHKテレビ番組『ブラタモリ(#172)』と一致していると、一部で話題になりました。確かにTV番組では日本三景の一つである「天橋立」を取り上げ、南側から見た「飛龍観」を象徴する現在の観賞(股のぞき)と、江戸時代に愛でられた本来の「天橋立」観賞場所と違いが、そのまま問3の景観写真で取り上げられていました。
「地理B」の問題は、大学入試センター試験の頃から知識量を問う問題も少なく、単純な暗記というより知識を使って要因や理由などを「論理的に思考・推理する問題」が増えたように思います。共通テストになってから一段と、その傾向が強まったように感じました。ともあれ、毎年、どんな問題が出題されたかを見るのがおもしろく、出題者であろう国公立大学所属の日本地理学会メンバーの顔を思い浮かべながら楽しみながら解いています。いずれにせよ、文理融合型の地理的思考こそ、SDGsが取り沙汰される現代、求められる力だと思います。グローバル化が叫ばれる現在、2022年から始まる高等学校新学習指導料要領で「地理総合」という新しい科目が、必修科目として導入されることになっています。AIの進化によるビッグデータの活用、3Dによる立体的なものの見方、視点の移動という地理的技能・思考の時代がやって来たのです。高校教育における約50年も続いた地理教育不遇の「沈黙の時代」に別れを告げると同時に、いま正に地理的思考が必要とされていると感じています。さあ、皆さんも地理的思考の時代へようこそ!