【校長ブログ】想像力が世界を救う
今週の日曜日(24日)、よみうりカルチャーセンター八王子での公開講座「戦場の歩き方 アフリカ奇跡のダイヤモンド編」を聞きに行きました。話し手はフォトグラファーの青木 弘さん(1976年鳥取県出身)。これまでにイラク、アフガニスタンなどの西アジア、アフリカの戦争・紛争をテーマとして20年近くにわたって精力的に撮影してきた方です。それぞれの土地では人間の生死を左右する悲惨で厳しい戦闘の状況が広がっていますが、青木さんはそれ以上に一人の人間としてそこで出会った人々の生き様や丹念に描います。
青木さんは、私たち見る側に先入観を与えることなく切り取った写真(画角)の背後にあるものを想像してほしいとの願いから、すべてモノクロにこだわって撮り続けています。それゆえ青木さんは、フォトジャーナリズムとしてではなく、自らをフォトグラファーと称し、フレームに収まりきらない現実や視点を少しずらし別の角度から事物や風景を見つめる独自の映像活動を展開しています。
講演会での青木さんの表情は、とても柔らかく、その表情や仕草の中に現地で出会った人々と事物とのふれあい、感情を感じることができました。また、私以上にアフリカを愛しており、「アフリカを愛し、アフリカに愛された写真家」と自称するほどのアフリカ熱を患っています。今回は、世界最貧国の一つであり、現地在留日本人がわずか3人(おそらく大使館員とそのご家族か?)という中央アフリカ共和国から持ち帰った写真をもとに人間の尊厳をテーマにした静かな語り口が印象的でした。他のアフリカ諸国同様に、中央アフリカではダイヤモンドが産出するが故に、その利権をめぐって紛争・内戦が続いており、加えて部族問題、宗教などが絡み、さらに問題を複雑にしています。そんな国での一人のリーダーとの出会いが、写真家としてだけでなく、一人の人間として青木さんのアフリカへの思い、人類への愛をさらに深いものにしているのだと感じました。
講演の最後に、青木さんの提案する写真の見方『アウト オブ フレーム』という手法を使ったワークショップが行われました。ここでは、青木さんの撮影した写真を90秒間見つめ、写真から分かること、感じることなどから物語をつくり、想像するというものでした。今回用いた写真は、黄昏れ時の広場で一人の男性が腰を下ろしてたたずんでいる情景でした。さて…
私が学んできた地理学でも写真を扱うことはありますが、そこには人文科学として写真と社会科学としての写真によって感じ方の違い、利用の仕方、考え方の違いがあり、面白く参加することができました。そして最後に青木さんは『想像力は世界を救う』という言葉で、この講演を締めくくられました。知的に興味深く、大いに刺激を受けた時間でした。
青木 弘写真展 Elephant in the room
2021年11月5日(金)~27日(土) ギャラリー冬青:中野区中央5-18-20
写真集『樹平線 juheisen』モーターマガジン社 定価 7 920円(本体 7 200円)
URL:http://www.hiroshiaoki-photo.com/
https://twitter.com/hiroshiaoki13