CLOSE

OPEN

LINE

小さな学校の大きな挑戦

たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】味覚の秋 ー魚食文化

 味覚の秋です。「旬」という季節性を大事にする日本文化にとって秋という季節は欠かせない存在です。実家のある南風泊(はえどまり)市場からもフグ初競りの知らせが届きました。今回は魚にこだわって考えみましょう。

 四周を海洋に囲まれた日本では、古来よりさまざまな形で海洋生物を利用した生活を送って来ました。「地理」や「歴史」の授業で学んだように、今から1万6千年前ごろに氷河期が終わると、地球は次第に温暖化し、関東地方では海面が現在よりも100120メートルぐらい高かったことが分かっています。この時代を「縄文海進」と呼んでいます。約一万年続いたこの時代、人々はすでに高度な魚食文化を持っていたと考えられています。貝塚を始め、全国に残る縄文遺跡からの出土品には、当時の食生活を物語るさまざまな遺物が見つかっています。大森貝塚(東京)や加曽利貝塚(千葉)、中里貝塚(東京)のマガキ養殖の可能性、三内丸山遺跡(青森)のサケとマダイの骨など、日本人の魚食文化のルーツが次々と明らかになっています。また、内陸においても山がちな地形と2000mm近い雨量に支えられ、背稜山脈を挟んで日本海と太平洋に注ぐ大小の河川、湖沼にはアユやヤマメなど多くの淡水魚に恵まれています。

 2013年にUNESCOの無形文化遺産に「和食」が登録され、今や欧米に限らず世界では「日本食」がブームになっています。その理由として、健康への関心への高まり、SDGsに代表される資源の有効活用の観点などが挙げられています。さらには、四季の移ろいに応じた産物の「旬」を大切にして来た日本では、「和食」という料理体系を築く上で魚の同様に重要な素材として位置づけされてきました。その点では高価だと言われている日本の食材をどのように海外に販路を広げ、輸出して行くのか考え、工夫する必要があるとも言えます。

 しかし、大学入試問題「地理B」の問題として出題される「世界の魚介類消費ランキング」を見ても、日本の消費量は首位の座をゆずり、現在ではインド洋に浮かぶモルジブをトップに世界の5番目にさえ入っていません。日本では、この30年の間に急速に「魚離れ」が進み、今では魚の消費量は30年前のさらに5分の1にも減少しています。逆に、肉類の消費は10年前に魚を抜き、じわじわと上昇し続けています。では、10年間に私たちの生活にどのような変化が起こったのでしょうか?

 こういう思考をすることが「探究学習」の第一歩なのです。とかく問題解決力が大事だと言われますが、現状をしっかりと分析し、そこに潜む問題を見出すこと、つまり問題発見力の方が論理的思考としては求められている力なのではないでしょうか?

 サンマ、サバ、サケなど「秋の魚」を前に、過去と現在、そして未来へと一本の糸で繋ぎ、考えてみてはいかがですか?