【校長ブログ】学べる「喜び」
今日から10月。緊急事態宣言も解除され、久しぶりに『日常』が戻ってきました。もちろんこれまでと同様に十分な感染症対策、啓発活動や指導を行いながら、学習も部活動、校外学習など、ほぼ通常通りに行って行く予定です。
ところで、世界を見渡してみると、どうなのでしょうか?新型コロナウイルス感染症拡大のことだけでなく、政治的経済的にも社会情勢的にも、「学ぶ」という環境条件が整っていない国や地域がたくさんあります。SDGsという言葉を目にしない日はないほど頻繁に使われていますが、その4番目に「質の高い教育をみんなに」という目標を掲げています。その実現のために、さらに細かく10のターゲットを挙げて実行するように求めています。しかし、これに対してアフガニスタンが直面している現実とは…。
ターリバーンの暫定政権による実効的な統治が始まったアフガニスタンでは、ようやく中学・高等学校が再開されました。ターリーバーンの幹部は20年前の統治とは異なることを宣言していますが、アブドゥル=バキ=ハッカーニ高等教育相は、「女性は教育を受けられるが、男性と一緒ではない」と説明しており、さらに「学生が学べる学問を見直す」とも発言しています。1996~2001年のターリバーン政権下では、女性は移動を制限され、教育や就労を禁じられたほか、公共の場ではブルカ(頭を含む全身を覆う布)の着用を義務付けられました。今回は、パシュトーン人の女性の伝統的衣装であったブルカは強要しないものの、ヘジャブ(ヒジャブともいう。首や髪の毛を覆う布)の着用は必要とすると発言しています。
実際に、再開された大学では男女別に講義が行われており,女子学生はブルカやへジャブ(ヒジャブ)などを着用して受講しています。政権幹部はイスラーム法の範囲で女性の教育や就労には反対しないと、繰り返し主張していますが、実際には医療従事者を除くすべての女性に対して、治安が改善するまで家にいるようにと要請していると伝えられています。
2001年以降、男女共学だった小学校でも、午前中が女子生徒、午後は男子生徒というように二部制の授業となっています。また、女子クラスでは女性教員が授業し、男子クラスでは男性教員が行うように改められています。もし性別の異なる教師が授業するなど適格者がいない場合は、衝立など見えない場所から授業するように求めています。さらに中学・高等学校など中等教育でも授業は再開されましたが、こちらは男子学生だけが学校に呼ばれているだけで、女子生徒や女性教員には未だに授業再開通知が出されていないのが実情です。
こうした情勢の中、首都陥落の混乱直前に、アフガニスタン唯一の全寮制私立女子校の全生徒および職員や家族たちが、アフリカ東部のルワンダへ無事避難したとのニュースが報じられました。カーブルにあったアフガニスタン指導者学院(SOLA)の250人余りの生徒たちは、カタールを経由してルワンダに到着したそうです。ルワンダで授業を再開させた校長のシャバナ=バシージラシーフさんは、いずれ全員帰還することを希望しているとし、「我々の再定住は恒久的なものではない…現地の状況が許せば、アフガニスタンへと帰還したいと願っている。現在のところは、我々のメンバーに対するプライバシーを求める」と、母国への強い想いを語っています。たとえアフガニスタンに残る道を選んだとしても、脱出する道を選んだとしても、人々の前に広がる道は決して平坦な明るいものとは言えません。しばらくの間は、苦難の茨の連続と言えるでしょう。しかし、ルワンダにいる彼女らは今、「学ぶ喜び」「学ぶ楽しさ」を噛みしめているのです。それを想像してみましょう。その意味で、私が先週自宅見たDVD『Breadwinner ブレッドウイナー』(2017年94分、アイルランド・カナダ・ルクセンブルク合作のアニメーション)はお薦めです。
一方、私たちの『日常』はいかがでしょうか?幸せなことに私たちはいつでも学習できる環境にあり、ほとんどの教材や教具が簡単に手に入ります。こうした環境にあって、私たちは「学ぶ」ということを合格への手段や道具とするだけではなく、本来の「学ぶ」意味、「学べる喜び」を噛みしめてほしいと思います。