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小さな学校の大きな挑戦

たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】自分の中の多様性を知る

 先週末から線状降水帯と思われる激しい豪雨に見舞われましたが、お変わりはございませんか。この度の豪雨で被災された皆様に対し、心よりお見舞い申し上げます。

 さて、猛暑の中での東京オリンピック2020が閉会し、24日からの東京パラリンピックに向けて準備が進められています。大会開催をめぐる政治的評価は他に委ねるとして、国や地域を越えて競技に打ち込むアスリートの姿とスポーツの持つ力に感動した人も多いことでしょう。しかし、それ以上に今大会で世界に発信された力とは、ジェンダーや人種など抑圧や差別に対するアスリートからの強いメッセージでした。

 現在、私達が直面する課題のひとつが、グローバル社会へ向けて「多様性」を相互に認め合うことです。しかし、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの中、海外や国内にとどまらず都市間の移動が制限され、異なる集団・社会を差別する風潮や弾圧が広がり、グローバル社会を揺るがす状況にあるといっても過言ではありません。それゆえ、多くのアスリートがいろいろな場面で「多様性の容認」を訴えているのです。

 20年以上も前のことですが、私は別の学校で半数の生徒が外国籍というクラスの担任をしたことがあります。国籍だけでも7か国・地域という状況でクラス経営に苦労しました。クラスに一体感を持たるようと、食事会をやったり、毎日「日本語ひらがな新聞」を発行したりしましたが、文化祭やスポーツ大会など、クラス全体がまとまって行う行事では企画立案や運営で意見がまとまらず、手を焼いた苦い経験を思い出します。

 私の実家近い場所で生活した金子みすゞの詩『私と小鳥と鈴と』の一節にあるよう「みんなちがって、みんないい」社会を達成するために私達が心得ておくこととは何でしょうか?言葉の上では「多様性」の重要性が広く認識されていますが、それぞれの個性を受け入れるだけでは「多様性のある社会」は達成することはできません。私の過去のクラス経営の時と同じく、ただバラバラな社会になるだけです。そこで、それらを生かす取り組みとして「多様性の受容と活用」という概念が注目されています。「多様性を容認」するために大事なことは「自分自身を知ること」、言い換えると「自分の中の多様性を知ること」です。自分が成り立っている理由や背景、場面や状況に応じて変化する自分をありのままに認める「絶対的自己肯定感」を持つことです。そうでなければ、自分と違った相手を受け入れることは難しいからです。

 同調性を重視してきた日本社会では、他人と違うことを貫くこと、「多様性」を受け入れることに躊躇することがありますが、「違い」はパワーを生み出します。また、これまでにやったことのないことに挑戦することには少しだけ勇気がいります。しかし、少しだけ変えることで見えてくる新しい地平、普段の仲間ではない人と話をすることは、皆さんに力を与えてくれ、新しい発見を生み出します。いつも同じこと、マンネリズムに浸っていれば確かに便利ですが、それでは「自己肯定感」を育むことにはなりません。甘えたゆるい関係からは、新しい発見は芽生えません。今まで経験したことがない体験や行動をすること、勇気を出して失敗を恐れずやってみることが「多様性を学ぶ」第一歩だと言えるでしょう。

 「見る視点」さえ鍛えれば、登下校の際に普段と違う道を歩くことでも、昨日までとは違う新しい発見があることでしょう。しかも、これは齢を重ねてからでもできる学習方法です。いつもとは違うことへの挑戦、「自分の中の多様性」に気づく手近な経験からやってみませんか。その意味で、私の一番のお薦めは「料理」と「読書」と「模写」です。さあ、夏休み後半の今からでも、ちょっぴり勇気を出して新しいことに挑戦してみませんか?