【校長ブログ】ライチ(茘枝)
今回もフルーツの話。赤味のある固いうろこ状の殻に包まれたライチ、殻を取ると下から乳白色のゼリー状の果肉が姿を表します。ただ、収穫後の痛みが早く、すぐに乾燥して殻が茶色に変色してしまうため、多くが冷凍品として輸送されてきました。普段は冷凍しか出回っていませんが、初夏に掛けてのこの季節、わずか2週間程度だけ生ライチが店頭に並びます。
ライチは、もともと中国南部の嶺南地方を原産地とするムクロジ科の果樹です。広東語でライチと呼ばれ、それが学名や英語名のもとになっています。漢字では「茘枝」と書き、日本語では「レイシ」と読みます。学名はLitchi chinensisとあるように、原産地での呼び方と地名が付されています。イチョウやヒカリゴケと同じく1属1種ですから、長い進化の過程で独自に発達したオンリーワンの存在ということになります。
ライチと言えば、その芳香でジューシーな果実が、唐代の楊貴妃(719-756)を魅了したことでも知られています。玄宗皇帝は、妃のためにライチを遥か嶺南地方から長安(現在のシーアン)の都まで1000kmも、数日かけて馬で運ばせたという逸話が伝えられています。それほどまでに人々を魅了したライチは、今でも高級果実としてもてはやされています。
ライチの生産を調べてみると、中国や台湾、インド、ベトナムで生産が盛んで100種類程度の品種があるそうです。日本へのライチの輸入は、中国・台湾に限られていましたが、2020年に初めてベトナムからの生ライチの輸出が許されました(「日本経済新聞」7月25日付)。ベトナムのライチ生産は世界で第4位、輸出量で言えば、マダガスカルに次いで世界第2位を誇っています。
6月下旬、店頭でよく見かける茶色の3cm大のライチは「黒葉(こくよう、くろは)」種と呼ばれている品種で、生産量が最も多い品種です。これに対し、台湾の高雄市で栽培されている大粒品種の「玉荷包(ぎょくかほう)」は完熟しても赤色の中に緑が残り、大きさの割に種が小さく肉厚で芳醇な果汁で知られています。また、「妃子笑(ヒシショウ)」は、その名から分かるように楊貴妃が愛でた果汁の多い品種で、中国嶺南地方の特産品となっています。
一方、日本でも温暖な宮崎県や鹿児島県でわずかに生産(全流通量の約1%)されており、高価な果物として知られています。宮崎県中部の児湯(こゆ)郡の沿岸地域では、15年前ぐらいからライチの栽培が本格化しています。とりわけ、完熟の大粒品種が有機栽培されており、中には1粒1000円もする高級品もあるそうです。また、新富町では、地元のこゆ財団と東京の「カフェコムサ」が共同して新富産ライチを使ったライチケーキの開発を行い、販売しています(カフェコムサ銀座店)。
という訳で、今週は私も生ライチを使ったオリジナルケーキを考案し、生ライチレアチーズケーキを作ってみました。貼付のPDFをご覧下さい。