【校長ブログ】琵琶と枇杷
「ビワ」という音を聞くと、「琵琶」と「枇杷」の2つの漢字が思い浮かびます。これが楽器と植物の違いだとは分かりますが、両者にど んな関係はあるのでしょうか?
楽器の「琵琶」のルーツはペルシア(現在のイラン)の古くはバルバットBarbatと呼ばれた楽器で、ソグド人の手でシルクロードを経て中国に伝わった四弦楽器とされています。「琵琶」という字を使って表すようになった理由は、弦を弾く時、バチを外側に向かって弾く動作を「琵pi」、内側向きに弾くのを「琶pa」に由来しています。これから弦楽器のことを「琵琶pipa」と呼ぶようになり、古い呼び名の影響からp音がb音に変化したと考えられています。日本で現存する最古の琵琶としては、「歴史」の資料集や記念切手にもなっている正倉院の「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんごだんびわ)」が有名です。ただし、ペルシアから中国に伝わった琵琶は四絃ですが、なぜ正倉院の琵琶は五絃なのでしょうか?実は、ペルシアから東方への文化の伝播には中国経由と同時にインド経由の琵琶があり、中国経由のものは四弦、インド経由のものは五弦として発達しました。後に、五弦琵琶は途絶えていますから、正倉院の琵琶はその意味でも貴重だと言えるでしょう。インド経由の琵琶は、日本では九州の筑前琵琶や薩摩琵琶に、その影響を見ることができます。
さて、もう一方、植物としてビワですが、こちらは「枇杷」と部首が「きへん」となっていることからも分かります。ビワはバラ科ビワ属に属する果樹で、原産地は中国南部とされています。その果実の形が、楽器の「琵琶」に似ていることから命名されたと伝えられていまし。
びわ栽培の歴史は古く、中国ではすでに2000年前には栽培の記録があるそうです。日本では、大分県、山口県、福井県などで野生種が記録されており、古い時代に中国から伝わったと考えられています。食用果実としての栽培は、江戸時代末期の天保・弘化年間(1830-1847)に長﨑で「茂木」品種に始まり、明治時代になって西日本に広まったと言われます。また、明治時代には新しく「田中」という品種が生み出され、現在では千葉県を中心に東日本の主力品種となっています。その後、農林水産省旧園芸試験場、千葉県、長崎県ほか民間育種会社などからも新しい品種がつくられましたが、今でもこの2品種が主力です。農水省統計(2020年)によれば、びわの全国生産量は2060トン、1991-92年をピークに減少傾向となっています。長崎県、千葉県、鹿児島県がトップ3で、それに香川県、兵庫県と続き、上位5県で全国生産の7割を占めています。これは、桜桃(さくらんぼ)、梅ほどではありませんが、かなりの寡占状態と言えるでしょう。
このように店先に並んでいる野菜や果物からも、いろいろな知識が身に付きます。先生や大人に言われるのではなく、自分で調べてみるからこそ面白さがあるのです。
学習は教室や教科書の中だけのものではありません。本物を手に取り、見て味わってますます学びを深めましょう。ということで、今回の校長料理教室は、簡単なびわパイの作り方です。