【校長ブログ】かんじんなことは、目に見えない
表題の言葉は、約70年前に発表されたサン=ペクジュペリの小説『星の王子さま Le Petit Prince』の中の名言です。そして、さらに言う。「ものごとは心で見なくちゃいけない」と。
今週水曜日、「学力推移調査」という基礎学力テストが終わった午後、中学生は消毒や換気、3密を避けるなど感染症対策を徹底して、体育館にて音楽座ミュージカルによる特別公演「リトルプリンス」を鑑賞しました。 これは、文化庁の「次のにない手を育成する子ども向けコンテンツ」事業に基づく公演で、首都圏の限られた中学校で行われたものです(https://kdm-contents.jp/project/1560/)。本作は、本来、2時間半ある作品ですが、事業の趣旨を踏まえ学校公演用に約70分に縮めた新バージョンで行われました。普段は活発で明るい笑顔の絶えない中学生も、サハラ砂漠に見立てたステージに集中し、最後のシーンでは言葉なく見入っていました。6月に予定していた芸術鑑賞会も中止となった中、本物の触れ、感動を共有しました。機会を与えてくださった音楽座のスタッフ、キャストの皆さん、至福の時間をありがとうございました。
皆さんご存知のように物語は、砂漠に不時着した飛行士が、宇宙の小さな星からやってきた小さな王子との出会いから始まります。齢は重ねても、どこか大人になりきれていない飛行士は、壊れた飛行機を修理しながら、王子の星の話や様々な大人たちが住む星の話を聞き、1年が過ぎていきます。やがて、飛行士と王子は、生きる上での大事なことを感じ取ることになりますのですが、二人にも別れの時が…。
また、話の途中には、地理学者が登場します。書斎にいる彼は、実際に現地を見てきた探検家の話を聞いて、それが正しいか見極め記録する仕事をしています。そして「永遠に変わらないもの」しか記録しないのだと。だから、王子が自分の星に一人ぼっちで残してきたバラの花なんぞに興味がないのだと。そこで、王子は「はかなさ」について改めて気づく瞬間です。地理学者にとって、はかないものが、王子にとっては「かけがえのない存在」だと気付き、旅立ちを初めて後悔するのです。私は、この地理学者の話を、武蔵大学で毎年受け持っている「地誌概説」講義の冒頭ガイダンスの中で小ネタとして使っています。
一方で、王子は宇宙にたった一輪しかない花を持っていると思い有頂天になっていたけれど、そんなことはなかった。あの花は、どこにでもある普通の花に過ぎず、地球で何千本のバラの花を目にして、世界に1つだけの花じゃないという現実を知るのです。自分しか知らない、自分しかできないことだと思ったら、そんなことはなかったのだと。さらに話は、キツネとの出会いに繋がります一見矛盾する二つの展開のようですが、実は底流で流れているものは同じなのです。こうしてキツネとの会話の中で、王子は一番大切なことに気づくのでした…。
さて、中学生の皆さんは、この公演で何を感じたのでしょうか?別紙にて、生徒の感想文をいくつか紹介しておきましょう。