【校長ブログ】共創・共生と直観
大和ハウスグループのテレビCM共創共生*「湯浅町・醤油少年」篇が放映されています。CMにもあるよう和歌山県有田郡湯浅町は日本醤油発祥の地と伝えられる町で、本校の『A知探Qの夏』が始まる以前、2017年のサマーセミナー「夏の社会科研修」で訪れた地です。一緒に出かけた高校1、2、3年生の中には、その記憶が残っている人もいることでしょう。
このCMには「この町が受け継いできたもの、この町にしかないものを、こどもたちに丁寧に教える大人たち。その使命感や熱心さが、この町を輝かせていました。」とナレーションが入ります。私たちも江戸時代から続く醤油会社「角長(かどちょう)」を訪問し、お忙しい中にも関わらず時間をとっていただき、工場長さんや社員さんたちから貴重な案内を受けました。今では3メートル近くもある大きな醤油樽は作る人がおらず、100年以上も経った古い樽を丁寧に使っているとの説明を受け、何人かは長くて重い棹を持って攪拌する作業を体験したりしました。
この醤油造りに欠かせないのが、原料の大豆と水と麹(こうじ)です。「こうじ」は醤油、味噌、日本酒、甘酒、みりんなど食品発酵に使うコウジカビに含まれ、タンパク質を分解するさまざまな酵素をつくり出し、分解・増殖する働きを持っています。「こうじ」と辞書で調べると、「麹」と「糀」の二つの漢字が出てきます。「麹」という字は奈良時代の文献に登場するそうですが、一方の「糀」という漢字は明治時代につくられた国字で「米コウジ」のみを表しています。また、日本醸造学会は2006年にコウジカビを「国菌」として認定しています。
わが家に近い町田街道沿いの町田市小山には、明治時代初頭から続く「井上糀店(販売店)」*があり、5代目の方が経営されています。46年ぶりにブルームーンとハロウィンが重なった先月31日の夕方、月の撮影に出かける途中に立ち寄って買い物をしました。井上糀店では、定期的にみそ作り教室を開催しており、販売店の裏手にある本店では国産大豆を使った味噌を製造・販売しています。
冒頭の大和ハウスグループの主張するように伝統文化継承の意義を考えつつ、秋の深まりを噛みしめているこの頃です。新しい時代の教育でも、多様な価値を認めながら、環境に配慮して、それぞれにとって幸せな社会の実現を追求することが課題と言えるでしょう。共創・共生を育み、直観力*を磨いて創造することが21世紀の社会が求めている力にほかなりません。まずはSDGsを視野に、身近な問題に触れ、共感することを大事にしましょう。
*Daiwa House Group共創共生「湯浅町・醤油少年」篇https://www.daiwahouse.com/ad/cm/syoyu.html, および
https://www.daiwahouse.com/about/philosophy.html(2020年11月3日閲覧)
*井上糀店販売店:194-0212町田市小山町2483-2、https://www.komemiso.com/(2020年11月3日閲覧)
*一島 英治(2007)ものと人間の文化史シリーズ138『糀(こうじ)』法政大学出版会, 229ページ.
*「直観」については、今月の「聖だより」15号を参照(校内配付のみ)