小さな学校の大きな挑戦

たまひじりのA知探Q 学びの玉手箱!
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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】「新しい生活様式」の中で

 コロナ禍の中、短い夏休みを終え、8月最終日の健康診断・身体測定から2学期がスタートしました。目に見えない感染症の拡大に不安や怯えさえ感じた春に比べれば、感染者数が増えたとはいえ、多少の余裕を感じることもでき、今を迎えています。本校でも50分の平常授業に戻し、厚生労働省、東京都などの指針に基づいた「新しい生活様式」を行動規範として学校生活を送っています。

 ただ、登校時の「密」を回避するため、スクールバスを学年別指定とし、登校時間を10分繰り下げました。それにより10分間の『朝の読書』を放課後に回し、『午後の読書』として時間は15分間に拡大しました。始業式に代わる各学年の集会でも話してきたように、10代半ば過ぎの生徒にとって重要な空間は「場の共有」であり、小さいながらも集団教育を基本する本校では、対面授業と同様、自然や芸術作品などの本物に触れ、読書においても「感動」「共感」を共有してほしいと願っています。そのきっかけづくりが『午後の読書(朝の読書)』です。ご家庭でも大人が読書する姿を見せること、図書のこと、作家のことを話題にすることが効果的だとの指摘があります*。併せて、旅行行事もできる限り行いたいと思案しているところです。

 また、登校時の全員の手洗い、その後の消毒、昼食時の一定の方向を向いての食事などを指導しています。しかし、まだまだ油断は禁物であり、十分に注意を喚起しつつ対策をとって運営していく所存です。また、年間行事計画では、2学期には文化祭、合唱コンクール、修学旅行(高校2年生)や研修旅行などを行うことになっていました。今のところ9月の文化祭は中止としましたが、他の行事は引き続き検討中です。生徒会や委員会ではそれらに代わる「しかけ」を考えているようですので、ご期待ください。ただ、図書館の夜間開館、部活動の時間と回数、対外練習試合、サポート講座など一部では9月中は制限を設けています。こちらも周辺状況を鑑み、段階的に緩和して行く予定です。

 さらには、1学期の授業再開以来、皆さんの安全と快適な空間のために先生方も皆さんが帰宅した後の校舎内共有空間の消毒を毎日行っています。さらには、多摩大学の先生方との月に1回を予定していた学習会も中止していますが、それに代わり、来たる学習指導要領、探究学習、新しい学力観などについて校内研修会を充実させ、将来の皆さんへ向けた準備に取り組んでいます。

 本校では、イギリスの経済学者A.マーシャル(1842-1924)の言う”Cool head, but warm hart!” をモットーに、ご家庭や関係各位の皆様の協力を得ながら全校一丸となって「新しい生活様式」に基づく学校生活に取り組んで参りますので、引き続きご理解・ご協力の程よろしくお願いします。

【蛇足】

 ところで「生活様式」という言葉は、地理学を学ぶものにとっては、特殊な学術的意味合いを持っています。

 主にフランス学派の地理学では、生活様式を「知的・社会的な生活環境における技術的側面またはその組み合わせ」と定義しています。それは生活におけるさまざまな領域と結びつき、必要な機能をもっていると考え、その類似性や相違性を比較・検討し、法則性を見出そうというのが地理学だとしています。しかし、日本の学校教育(中学・高校)ではその表出した部分(知識)だけに未だ偏っており、地理学の醍醐味やダイナミズム、方法論については大学教育まで待たなくてはなりません。それゆえ「地理」は暗記科目という誤解を受けるのです。この点で欧米の学校教育に遅れをとっており、そこに歯がゆさがあります。それゆえ、「科学地理オリンピック」「国際地理オリンピック」に挑む少数の高校生は、日本の教科書と欧米との差に驚き、学問的な面白さにはまるのです**。この感覚が、英語教育以上に日本のグローバリゼーションの遅れと関連がありそうです。

*立田 慶裕ほか(2015)家庭内読書の普及をめざす「家読」事業の教育的効果に関する実証的研究、「科研費 研究課題26590206」研究成果報告書

**国際地理オリンピック日本委員会ホームページhttps://japan-igeo.com/ (2020年9月7日閲覧)