【校長ブログ】『裸の王様』と探求する喜び
待ちに待った学校の再開です。校舎棟入り口にちょっとした掲示を掲げました。本校では、先週から段階的再開を行い、来週から6月いっぱいは時差登校、7月からは平常授業を予定していました。しかし、昨晩「東京アラート」が発令されたことを受け、今週末の保護者会と来週の授業について変更することにしました。詳細について、明日中には緊急メールとプリント(J3,H2,H3は木曜日配付、J1,J2,H2は金曜日配付)にてお知らせします。また、部活動や学校関係者以外の方を招聘しての行事、校外の活動については当面、自粛をお願いします。これら行事の再開については、改めてお知らせします。
皆さんが自宅学習の間は、とても寂しい学校でしたが、これからの学校のあり方や授業などについて先生方と話し合いを重ねることができました。個人的には大学の「地理学」オンライン講義のほか、たくさん読書もできました。今回は、中学生の頃読んだ本の中から好きだった一冊紹介しようと思います。
私の好きな作家の一人である開高 健(1930-1989)さんの作品に『裸の王様』*があります。この作品を初めて読んだのは、中学2年生の頃だったと思います。もちろん、小説のもとになったのは、デンマークの童話作家ハンス=クリスチャン=アンデルセンが1837年に発表した作品です。皆さんも絵本で読んだりしてストーリーを知っている人も多く、『裸の王様』と聞けば「自分でしっかり考え、判断することが出来ないことの愚かさを戒めた」話だとわかるでしょう。開高さんの作品では、美術教室を主宰する〈僕〉にまつわる話です。デンマークとの児童交換絵画展の審査会でのこと、一人の男の子の作品を巡る大人たちの対応を描いた作品で、第38回下半期芥川賞を受賞作しました。この物語では、ストーリーだけを聞かされた素直な男の子が描いた絵をめぐって、既成概念に囚われた大人たちの愚かさ戒めるという二重の比喩を含んでいます。
思春期の真っ只中にいる皆さんにとっても、社会ルールを守り、他人を傷つけないようにすることは大切ですが、科学の世界では常識をもう一度疑って考えることも必要です。独善的にならず適切な判断力を持って、なぜだろうと突き詰めことが習慣となるよう心掛けてほしいものです。
*開高 健(1960)『パニック・裸の王様』新潮文庫