小さな学校の大きな挑戦

新しい聖ヶ丘が始まる A知探Q
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聖ヶ丘ニュース
校長

【校長ブログ】3.11に想う

 桜の開花のニュースが、南から聞こえてくる季節になりました。と同時に、今年も「明日へ向かって生きる力」について考える季節ともなりました。

 あの日から9年。東日本大震災で亡くなられた方々に心より哀悼の意を捧げ、今もなお辛い生活をお過ごしの皆様に1日でも早く安らげる明日が来ることを、心よりお祈り申し上げます。

さて、あの日、私たちは21期生の高校卒業式を終えて、多摩センターで謝恩会の乾杯を行う直前でした。突然の大きな衝撃の中、揺れる天井のシャンデリアを眺めていました。その時は、まだ情報もなく事の重大さも知らず、「謝恩会が終わる頃には、電車も動き出すだろう」と、暢気に構えていました。しかし、やがて事態が分かるに連れ、皆さんをいかにして自宅まで帰すことができるだろうかと、その手配に奔走することになりました。ただ幸いなことに、謝恩会にはほとんどの保護者の皆様が参加されており、生徒と一緒だということが一番の安心でした。ただ、中には、明日が国立大学の個別試験という生徒もおり、新幹線が動いている小田原まで生徒を送り届けたり、学校に戻った先生方は校内に残っていた在校生を車で自宅に送り届けたりしました。謝恩会会場でもホテルのご好意により、ずっと部屋を使わせていただきました。最後の生徒を迎えに来た保護者の方に引き渡し、私が自宅に戻ったのは午前3時を過ぎていました。

 その後、本校でも生徒会を中心に募金活動をしたり、自分たちにできることはしました。吹奏楽部では、福島の中学生との交流をしたり、毎年春には復興チャリティーコンサートを続けています。また、昨年の「A知探Qの夏」の特別講座では、「被災地支援を考える」として多摩大学村山ゼミと協力した独自の取り組みを続けています。

 しかし、これまでを振り返ってみたとき、私が心を打たれたのは、震災を機に多くの欧米の方々が日本を去る中、日本国籍を取得して福島に移住した日本文学者ドナルド=キーンさんのことです。キーンさんは、1922618日、ニューヨーク市に生まれ、アーサー=ウェイリー訳の『源氏物語』に感動したことを契機に、日本文学研究を志したそうです。残念ながら昨年の224日、心不全のためお亡くなられましたが、生前、キーンさんは、日本人について「美を感じ取る心、人を思いやる心がある」ことが素晴らしいと語っています。

 ただ、今の日本はどうでしょうか。不確かな情報だけで判断したり、人の嫌がることをSNS上に書き込んだり、不適切な動画を平然とアップしたり、自己中心的なモンスター的発言をしたり、美意識や倫理観などが揺らいでいると思われることが頻発しています。キーンさんの絶賛する日本人の美意識はどこに行ってしまったのでしょうか。

 東日本大震災以来の臨時休校の期間、感性を磨き教養を育むためにも、キーンさんにならって、ぜひたくさんの読書をして、経験できないこと、未知の世界、想像の彼方へ旅立ってみましょう。

                                       令和2(2020)年3月9日
                                        校長 石飛 一吉